バカと利口のちがいはどこにある?【書評】バカが多いのには理由がある
「バカ」の定義
本書でいう「バカ」とは、ファスト思考(速い思考、いわゆる直感)しかできない人のこと。
人体に負荷がかかるスロー思考(遅い思考)を避けたがります。
たとえば 17×24= ? の暗算計算をしてみてください と問われて
珠算経験がない人は、計算中に心拍数や血圧が上昇し、筋肉が硬直する生理的変化が起こるそうです。
直感で判断できない(スロー思考を要求する)問題は、このような不快な生理反応を引き起こします。
反対にすぐに答えが出るファスト思考は、わかりやすくて快適です。
負荷のかかるスロー思考を人は無意識のうちに避けようとします。
その方法は原理的に2つしかありません。
- 遅い思考が必要な問題を無視する
- あらゆる問題をファスト思考(直感)で解こうとする
たとえば、上記の暗算にしても「電卓があるから、こんな計算に意味はない」と考えるやり方です。
もっと複雑な問題を前にしても「そんなことは私の人生になんの関係もない」と問題の存在自体を否定します。
さあ、あなたはファスト思考だけで生きていませんか?
本書の概要
プロローグ
- ファスト&スロー
- 正義と進化論
- 狂信はどのように生まれるのか
- 「光と徳の物語」としてのゼロ
政治
- ニッポンの右翼化
- 嫌韓と反中
- 「日本を取り戻す」政策
- ニッポンはどこへ行くのか
経済
- ブラックな国
- イエという呪縛
- 自虐的な経済政策
- 経済は面白い
社会
- ニッポンの暗部
- 腐った楽園
心理
- こころの内側
エピローグ
- 貧しい人をより貧しくするフェアトレード
- アフリカではなぜ手足が切断されるのか
ファスト思考しかできない私の読後感は・・・
もっと複雑な問題を前にしても「そんなことは私の人生になんの関係もない」と問題の存在自体を否定します。
してました。してましたよ(笑)
おまけに女性は直感力が鋭くて、よく問題の本質を突くんですよね。
一回それで正解が出ると、すべての問題を直感で解こうとします。
それは、手持ちの定規で、長さだけではなく温度や重さを量っていこうとする愚かさに似ています。
なぜ今スローな思考が必要なのか
スロー思考は文明が誕生してから必要になりました。
だから、スロー思考が必要になったのは、たかだか数千年。
人類に天敵がいた時代、スローに考えていたら食べられてしまいます。
だからファスト思考は、人類の標準的な思考なのです。
しかし、ファスト思考で生き延びてきた人類は、ファスト思考によって殺しあう時代を生きています。
相手の正義を否定することで生まれる戦争が各地で起きています。
特に領土問題は、「生物の縄張り」という本能に根差していますので、ファスト思考でお互いに考えると、平和的な解決は難しいものです。
世界が多様化して複数の「正義」が存在する今、スローな思考こそ皆が共存できる道だと、本書は指摘して終わります。
実に読み応えがある本なので、年末年始の時間ができるこれからにオススメしたい本です。