日本型格差とは?【書評】日本はなぜ貧しい人が多いのか
事実には基づかない思い込みをデータによって正そうとしているのが本書
ちょっと硬めの経済学の本です。
経済オンチの私としては、分かりやすそうな所から、ガジガジかじるように読んでいます。
新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学
- 作者: 原田泰
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/26
- メディア: 単行本
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事実に即さない思い込みが世の中にあふれていると著者は指摘しています。
たとえば、よく聞くこれらの主張
などなど、一般に流布している言説について、事実はどうなのか言及しています。
その中で、私が一番興味深かいと思った項目を、このブログで取り上げてみたいと思います。
それは日本はなぜ貧しい人が多いのかについてです。
世界的に格差が拡大しているワケ
格差を論じるときに出てくるジニ係数という指標
この係数は、社会における収入格差の程度を計測するための指標です。
0に近いと平等で、1に近づくほど不平等な社会であるそうです。
一般に、ジニ係数が0.4を超えると社会が不安定化する恐れがあると言われています。
真ん中の赤い線が日本のデータです。
平等神話が強い日本ですが、ジニ係数は昔から低くないですね。
2002~2003年にかけて日本のジニ係数は低くなっていますが、これは小泉政権時のころ。
あれれ?小泉政権時代に格差は広がったというのが一般論ですが。
図表を見ると、全体的に各国右肩上がりです。
これには理由があって、各国の高齢者の割合が多くなっているから。
人間年を取るにしたがって収入に差がでてくるのは当たり前のことで、逆に頑張っても頑張らなくても同じなのは不平等な社会なのです。
所得に差が出やすい高齢者の割合が多くなると、ジニ係数の数値も高くなっていくようです。
ジニ係数を見る限り、日本は昔からそれほど平等な国ではなかったし、今も昔から比べて格差は言うほど広がっていないようです。
では、日本には格差は少ないのでしょうか?
答えはノーです。
日本型格差の正体とは?
日本には生活保護水準以下の所得で暮らしている人が、人口の13%いると推計されています。
ところが実際に生活保護を受けている人は、人口の0.7%と言われています。
日本型格差の正体とは、お金持ちと庶民の格差ではありません。
生存権さえ危うい「貧しい人が多い」こと、そしてそれらが放置されていることにあります。
特に対策が急がれるのは、若者・子供世代の格差是正です。
特に18歳以下の子供たちには、貧困ゆえに進路の選択肢を狭めている状況が多いと思われます。
「昔の日本はもっと貧しかった。それでも我々は立ち上がったのだ」という声は完全に無視しましょう。
みんな貧しい世の中と自分たちだけが貧しい世の中では、状況がまるで違います。
実は、私は子供時代は貧困家庭に育ちました。
父が病弱で働かない人間なのに、家族は7人。
母の内職と祖母の年金でやっと暮らしている状況でした。
高度経済成長が終わったあとの貧困家庭でしたので、自分だけが教室内で極めて貧乏というのは心底こたえました。
服も着た切り雀状態なので、オシャレに関心がないふりをし(そのうちに本当に関心がなくなった)
お金がかかる話題にはついていけないので、友達づきあいも考えてしなくてはなりません。
幸い、私は勉強ができたので、劣等感につぶされることはありませんでしたが。
成績はクラスのトップでも、進学したいとは言える経済状況ではありませんでしたので、進路も限られました。
それに、進路について相談したくても、肝心の親が生活するのに精いっぱいで子供のほうに向き合う余力がないのです。
このように、大きな可能性を秘めている年代に、いろんなことを諦めながら生活しているのが、貧困家庭に育つ子供たちなのです。
私は運よくバブル時代に就職が決まって、きちんと経済基盤を持つことができましたが、今の厳しいご時世では、もっと若年層への格差是正をしないと、自力で貧困層から抜け出すのは難しいでしょう。
この記事のまとめとして
- 昔と比べて格差は言うほど広がっていない。
- 昔から格差があり、放置された貧困世帯が多すぎる。
- それなのに政府は「自己責任」の一言で済まそうとしている。
私のような一般市民にできる貧困対策はほとんどないでしょうが、少なくとも「自己責任」という無責任な言葉は使わないようにしたいと思います。